糖尿病・高血圧症・高脂血症などの生活習慣病と消化器系疾患を中心とした診療を行っております。

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成人病News



日本成人病 (生活習慣病) 学会のお知らせ

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会学術集会 開催

 新年おめでとうございます。全国的に厳しい寒さが続いていますがお元気でいらっしゃいますか。
 新年の恒例の行事となっていますが、本年も第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会が 1月13日 (土)・14日(日)の2日間、東京都市センターホテルで開催されます (下記) 。
 今回は東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学の瀬戸泰之教授が会長を務め、"温故知新"をテーマに、成人病・生活習慣病に関する講演 (会長講演、理事長講演、特別講演) 、シンポジウム (3題) 、教育講演 (3題) 、プレナリーレクチャー (3題) 、共催セミナー (モーニングセミナー 1題、ランチョンセミナー 4題、イブニングセミナー 2題) 、日本糖尿病療養指導士講座の他に、多くの一般演題 (75題) が発表されます。シンポジウムの1題 (1/14 「職域におけるメンタルヘルスケア」) は日本医師会認定産業医講習更新研修に予定されています。本学会は成人病 (生活習慣病) に関する最先端の臨床的テーマが発表される学会として定評があります。多くの医師、医療スタッフの方々のご参加を期待しています。

第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会学術集会
 期日:平成30年1月13日(土)・14日(日)
 会場:都市センターホテル (5階オリオン、6階601)
 会長:瀬戸泰之先生 (東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学)

第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会・市民公開講座
  "知って得する こわーい 大人の病気―納得、理解、そして予防―"

第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会・市民公開講座チラシ縮小画像

 第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会学術集会の翌週、平成30年1月21日(日) 14:00〜16:00に東京大学安田講堂において"市民公開講座"が開催されます。本講座は、代表的な5つの成人病 (生活習慣病) について、それぞれのエキスパートの先生方から一般の皆様向けにわかりやすく解説いただきます。それぞれのテーマと演者の方々は下記の通りです。座席には余裕があると思いますが、事前登録などは不要ですので、多数ご参集ください。


※右の画像をクリックすると本市民講座の
チラシをPDFでご覧いただけます。

第52回日本成人病 (生活習慣病) 学会 "市民公開講座"
 期日:平成30年1月21日(日) 14:00〜16:00
 会場:東京大学安田講堂 (本郷)
 [プログラム]  ※上段太字:演題、下段:演者
 開会の辞:瀬戸泰之先生 (東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学)
 挨   拶:岩本 安彦 日本成人病 (生活習慣病) 学会 理事長
               朝日生命成人病研究所 所長
 1 あなたの知らない糖尿病
   山内 敏正先生 (東京大学 糖尿病・代謝内科)
 2 あなたの知らない心臓病
   波多野 将先生 (東京大学 循環器内科)
 3 あなたの知らない肝臓病
   建石 良介先生 (東京大学 消化器内科)
 4 あなたの知らないサルコペニア・フレイル
   愛甲 丞先生 (東京大学 社会連携講座)
 5 あなたの知らないがん
   山下 裕玄先生 (東京大学 胃食道外科)
 閉会の辞:瀬戸泰之先生

 
 

受診中断防止をめぐって

診療部長・糖尿病代謝科 吉田 洋子

糖尿病の受診を続けると合併症の発症が抑制される

 糖尿病の治療をする上で一番難しいことは何でしょうか?
 糖尿病は、適切な治療を続けることにより、健康な状態が維持されます。通常は症状がなく、検査所見が正常に近くとも、治ったわけではありません。治療を中断すると血糖値が高くなりやすくなります。糖毒性と称される膵臓β細胞障害やインスリン抵抗性の悪化からさらに高血糖となり、血管内皮細胞の障害、腎臓での糸球体高血圧、末梢神経代謝異常など全身に障害が起こります。
 最近の報告では、治療を開始したばかりの患者が治療開始後1年以内に半年以上受診を中断すると、2−8年後の細小血管症 (糖尿病網膜症や神経障害、腎症) の発症が高率になり、累積医療費が増大すると報告されました (Diabetes Res Clin Pract 123:55-62,2017) 。逆に見れば、受診を続けることで合併症の発症と医療費が抑えられやすくなると言えるでしょう。
 厚生労働科学研究「糖尿病予防のための戦略研究」の課題2 (J-DOIT2) では、通院している糖尿病患者のうち、約8%が治療を中断する可能性があると報告されており、受診中断を如何に防ぐかが課題になっています。

糖尿病受診中断対策マニュアルの効果

 2014年に発表された「糖尿病受診中断対策マニュアル」では、受診防止対策としていくつかの具体的な方法が示されています。
 このマニュアルの有効性についてのパイロット研究では、マニュアルに基づいた指導を行うことより受診中断した患者の数は千人当たり15.0人から6.7人に減少していました。具体的な対策として効果があるという回答を多く得たのは「受診継続の重要性を説明する」「栄養指導・療養指導を行う」「薬剤による医療費負担を見直す」「待ち時間を短くする」でした (プラクティス34:544-550,2017)

当院の糖尿病初期教育

 さて私どもは初診の糖尿病患者さんに対して、医師、看護師、管理栄養士がチームとなって 『初診時療養指導』 を行っています (“成人病News”vol.14) 。初診時療養指導は、外来での糖尿病初期教育を目的として医師と医療スタッフの皆で相談してとして立ち上げたものです。
 医師の診察の後、看護師と管理栄養士が今までの糖尿病の治療経過と生活スタイルを詳しく伺い、糖尿病に対する気持ちや考えを尋ねます。糖尿病とはどのような病気かを話し、患者さんとともに、体に良い食事や身体活動を増やすための当面の目標を考え、2回目の受診の際に目標を修正します。
 この初診時療養指導に受診中断防止効果があるかどうか検討したところ、初診時療養指導は他の項目で調整しても、有意に受診中断を防止する効果が認められました (糖尿病 57 Suppl.1:S-145) 。他に受診中断に関連する項目は、男性、若年、勤務あり、未治療が中断しやすい因子として、尿蛋白陽性、眼科受診、初診時療養指導が中断しにくい因子として抽出されました。合併症の検査と初診時療養指導により糖尿病の理解が進んで治療の動機づけとなり、療養生活の手がかりがみつかりやすくなるものと推測されます。

受診中断に関する話題

 最近、糖尿病患者の受診中断をAIで予測するモデルが開発され、受診中断を7割の精度で予測することが示されました。受診中断を予測することができれば、積極的に支援する患者がわかり、受診中断防止に繋がる可能性があります。
 日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚生労働省では2016年3月から糖尿病性腎症重症化予防のためのプログラムとして、糖尿病治療中断者や健診未受診者に働きかけています。
 一方仕事が忙しく受診できない場合の一つの対応策として今後「遠隔診療システム」が広まるかもしれません。もともとは離島やへき地の患者などを対象に医師が遠隔治療を行うものでしたが、2015年8月から対象者は地域が拡大され、都市部においても遠隔治療の取り組みが始まっています。ただし病状が落ち着いている方に限られるものだそうです。
 近年糖尿病治療薬の選択肢が広がり、良好な血糖コントロールの達成が望めるようになりました。血糖コントロールの目標を患者さんと医療者が相談して決め、行動目標を医療者とともに決める時代となりつつあります。受診すること、受診を続けることで糖尿病とよりよく付き合うことが可能になると言えます。

 
 

新しい糖尿病薬

薬剤室・チーフ 長谷川 千代子

新しい経口糖尿病薬

1 週1回服用のDPP-4阻害薬
 消化管由来のインクレチンの働きを高めて、血糖値が高いときにだけ作用するDPP-4阻害薬が低血糖や体重増加が少ない薬として、多く使われるようになっています。
 そして、このDPP-4阻害薬に週1回服用で良い薬が新たに加わりました。
 2015年5月に「ザファテック®錠」2015年11月に「マリゼブ®錠」が発売されました。
 週1回の服用ですが、1日1回あるいは2回毎日内服するDPP-4阻害薬と同等の血糖改善効果があります。
 「ザファテック®錠」は、「ネシーナ®錠」の構造の水素(H)をフッ素(F)で置き換え、DPP-4阻害作用を変えないまま、代謝酵素などによる影響を受け難くし、持続効果が得られました。「マリゼブ®錠」は、肝臓で代謝をほとんど受けず、腎臓で排泄されるときにほとんどが再吸収されるといったメカニズムから、効果が1週間持続します。
 一人暮らしの高齢者、認知症などで自ら服薬管理ができない要介護者、不規則勤務や仕事が多忙で毎日の規則正しい服薬ができない症例、毎日製剤を飲み忘れて残薬が発生している症例などに対し、少ない服薬負担で血糖コントロールを良好にしてくれる薬として期待されています。
 この薬を正しく服用するコツとしては、服用する曜日を決める、薬のシートに服用する日や曜日を記載しておくなどの方法があります。ただし、週1回製剤を飲み忘れると血糖管理に大きく影響が及ぶので、飲み間違えたときの対応方法についての服薬指導が大切です。この他に注意することとしては、一度服用すると1週間は薬の影響を除去できないため、服用後にシックデイ (※下注1) となった場合は、安全性の高いインクレチン関連薬とは言え、消化器症状による脱水や、他の糖尿病薬を併用の場合には低血糖の危険が全くないわけではないので、シックデイでの内服方法を指導することも大切です。
  ※注1「シックデイ」:糖尿病患者が発熱、下痢、嘔吐をきたし、または食欲不振のため食事が
   できないときのこと。シックデイの際には高血糖・低血糖等、血糖値の乱れを生じやすく、
   急性合併症が起こりやすくなるので、糖尿病の療養生活上、注意が必要な日である。

2 配合薬
 良好な血糖コントロールを得るために異なる作用機序の糖尿病薬を組み合わせて使います。近年、経口糖尿病薬には、異なる作用を示す経口糖尿病薬が配合された薬が次々と上市されており、7種類11製薬あります (別表PDF「経口血糖降下薬の配合薬一覧表」)
 この配合薬を使うことのメリットとしては、服薬する錠数や服薬回数を増やさずに血糖値を改善、単剤の増量に伴う副作用の発現を抑えることできます。患者にとっては、服薬忘れなどを防げ、薬剤アドヒアランスの改善や経済的負担の軽減にもつながり期待されています。
 デメリットとしては、配合薬に含まれる薬剤用量の固定化は、良好な血糖コントロールが得られているときにはこれを継続することが望まれますが、血糖コントロールが不安定になった場合に、きめ細かい用量調整が難しくなります。また、それぞれの薬の注意点がそのまま配合薬の注意点となります。例えば、ピオグリタゾンは心不全の患者には禁忌になっています。そのため、ピオグリタゾンがベースの配合薬、「メタクト®配合錠」、「ソニアス®配合錠」、「リオベル®配合錠」も心不全患者には禁忌となります。配合薬を服用して副作用が生じた場合に、どちらの薬が原因か良くわからないとも言われています。配合薬に含まれる成分に気付かず同じ成分の薬を重複して服用してしまう可能性があるため、重複しないよう確認する必要があります。

新しい注射薬

1 週1回投与のGLP-1受容体作動薬
 2010年に我が国で初めてGLP-1受容体作動薬の「ビクトーザ®」が発売され、2013年5月には週1回のGLP-1受容体作動薬の「ビデュリオン®」が発売され、2015年8月に注射手技が簡便な「トルリシティ®」が発売されました。
 「ビデュリオン®」は、注射してエキセナチド10㎍1日2回注射で得られる治療域の血中濃度に近くなるのに4〜6週間ほど要し、効果発現は緩徐です。針は23Gと太く、用事懸濁して混和する作業が必要です。
 「トルリシティ®」は、週1回製剤のエキセナチドに比較すると、消化器副作用、食欲抑制作用、体重減少効果が弱いです。作用発現は早く、注射1〜2日で効果が発現し、3週間でほぼ定常状態に達します。透明な液体で、注射器は患者が針を見ることなく、キットの先端を腹壁などの注射部位にあてて押すだけで注射できます。また、29Gと細い針が使われています。週1回の注射で良い、投与量の調節が必要ない、嘔気が少ないということが薬剤アドヒアランスを高め、在宅治療中の高齢者や自己注射が難しい要介護者の場合、忙しい社会人にとっても利便性が高い薬と言えます。
 この薬を正しく注射するコツとしては、注射する曜日を決める、注射日を手帳やカレンダーに印をつける (「トルリシティ®」:リマインダーシールという注射日を手帳やカレンダーに貼るシールがあります) 方法があります。ただし、週1回製剤を注射し忘れてしまうと血糖管理に大きく影響が及びますので、注射し忘れた時の対応方法についての指導が大切です。
 この他に注意することとしては、副作用としての悪心、嘔吐などの消化器症状が出現した場合、毎日注射する製剤ですと薬剤の減量が容易ですが、週1回製剤では減量が難しくなります。

2 バイオシミラー
 インスリン治療は、1型糖尿病でも2型糖尿病でも使われ、良い血糖コントロールをもたらしてくれますが、経口糖尿病薬に比べると高価なため、患者にとって経済的負担になります。これを解決すべく2015年には、インスリン製剤として初めて「バイオシミラー」が登場しました。
 「バイオシミラー」とは、バイオテクノロジーを用いて製造された先行バイオ医薬品とアミノ酸配列が同一で企業間で製造過程は異なる製剤をいいます。
 先行バイオ医薬品と高い類似性をもち、有効性と安全性が同等であることが臨床試験で証明されています。バイオシミラーの薬価は、先行バイオ医薬品の約70%です。例えば、薬代が 2,000円/月かかっている場合、年間では 24,000円かかりますが、「バイオシミラー」を使うと年間 16,800円になり、7,200円の医療費の節約になります。ただし、先行バイオ医薬品とバイオシミラーではデバイスが違いますので、患者へデバイスの特徴、手技等の説明や指導が必要になります。