糖尿病・高血圧症・高脂血症などの生活習慣病と消化器系疾患を中心とした診療を行っております。

〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-2-6 朝日生命須長ビル 2・3・4F

成人病News

第7回日本成人病(生活習慣病)学会 教育集会から

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

「第3回あさひ健康まつり in 日本橋」に多数ご参加を!

 11月17日(木)14:30 〜 18:30 朝日生命成人病研究所(9F特設会場)において「第3回あさひ健康まつり in 日本橋」を開催いたします。
 当日は、生活習慣病についてのポスター展示、食品に関する展示、生活習慣病の予防に関する企業情報ブースなどのほか、血圧測定、血糖値測定、 頚動脈エコー検査も行います。また、医師による相談コーナー、栄養士による相談コーナーも開設し、皆様のご来場をお待ちしています。
 ふるってご参加下さい。

第7回日本成人病(生活習慣病)学会 教育集会から

 2016年9月17日、東大病院入院棟Aの大会議室において、第7回日本成人病(生活習慣病)学会の教育集会が開催されました。教育集会は年次学術集 会(1月)と並ぶ教育プログラムで、例年テーマを定めてエキスパートに講演をいただくものですが、今回のテーマは、「高血圧症の病態と合併症」 でした。成人病の中でももっとも頻度が高い高血圧症をとり上げ、高血圧症に伴う重要な合併症(臓器障害)について、5名の先生方から下記のよう なレクチャーをいただきました。会場を埋めた医師、メディカルスタッフからは「大変わかりやすい講演でした」との感想が寄せられました。

1. 眼疾患・網膜症   加藤  聡 先生(東京大学 眼科学教室 准教授)
2. 脳血管障害     北川 泰久 先生(東海大学医学部 神経内科 特任教授)
3. 心・循環器合併症  河野  了 先生(筑波大学医学医療系 循環器内科 教授)
4. 腎疾患       濱田千江子 先生(順天堂大学医学部 腎臓内科 准教授)
5. 末梢血管疾患    宮田 哲郎 先生(山王メディカルセンター 血管病センター長)

秋に開催される糖尿病、成人病関連学会のご案内

 今年の夏は例年になく異常な暑さに見舞われ、全国各地で異常気象による自然災害の被害を受けましたが、9月も中旬を過ぎ漸く涼やかな秋の風を 感じる季節を迎えました。  秋には成人病関連の学会や講演会が数多く開かれます。以下に、肥満、糖尿病関連の学会をご案内いたします。11月には14日の世界糖尿病デーを中 心に、各地で糖尿病の予防と啓発のためのイベントが予定されていますので、多くの方々のご参加を願っています。

   ● 第37回日本肥満学会
     会長:小川 佳宏 教授 10/7−8, 東京

   ● 第31回日本糖尿病合併症学会
     会長;及川 眞一 先生 10/7−8, 仙台

   ● 第22回日本糖尿病眼学会
     会長:北野 滋彦 教授 10/7−8, 仙台

   ● 第32回日本糖尿病・妊娠学会
     会長:清水 一紀 先生 11/18−19, 岡山

   ● 日本糖尿病財団主催 糖尿病予防キャンペーン
       東日本地区 世話人:石橋  俊 教授 11/6, 宇都宮
       西日本地区 世話人:戸谷理英子 先生 11/13, 岐阜

九重親方との思い出

 昭和から平成への大横綱 九重親方(元 第58代 横綱 千代の富士関)が本年7月31日、膵臓がんのため61歳の若さで急逝されました。昨年5月には 還暦の土俵入りの勇姿を報道で拝見したばかりでしたので、本当に驚き残念でなりませんでした。
 私が九重親方と親しくお目にかかってお話をうかがったのは1回だけでしたが、今でもその時の穏やかな話し振りと現役当時の勝負に対する情熱に あふれた思い出、さらにご自身の健康管理に関する話題などをお聞きし、感銘を受けたのをついこの間のことのように思い出しました。心から九重親 方のご冥福をお祈り申し上げます。

 
 

第76回アメリカ糖尿病学会(ADA)のトピックスから

糖尿病内科・部長 尾 淑子

2つのアウトカム試験結果に注目集まる

 今年のADA年次学術集会は2016年6月10−14日にルイジアナ州ニューオーリンズで開催されました。世界127か国から約15,000人が参加する糖尿病に関する世界最大規模の学術集会です。今回、最も注目されたのはGLP-1受容体作動薬のリラグルチドの心血管アウトカム試験[※下注1]であるLEADER試験の結果と、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンを用いたEMPA-REG OUTCOME試験の腎サブ解析結果でした。両シンポジウムでは参加者が巨大ホールを埋め尽くしました。
  ※注1「アウトカム試験」:目標とする治療結果を新薬が出しているかについての検証試験

 LEADER試験では、心血管イベント発症リスクの高い2型糖尿病患者9,340名(リラグルチド群4,668名、プラセボ群4,672名[※下注2])を3.5−5年間追跡し、リラグルチド群が主要エンドポイントである心血管死、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中の心血管複合イベントを13%有意に低下させたと報告されました。この国際共同多施設無作為化二重盲検プラセボ対象比較試験の対象者にはアジア人が8%含まれています。抗糖尿病薬が心血管イベントを抑制したという結果は昨年の欧州糖尿病学会(EASD)で報告されたEMPA-REG OUTCOME試験に次ぐ快挙です。両試験の比較も行われ、EMPA-REG OUTCOME試験ではより早期(開始3か月目)から心血管アウトカムに差が認められたことも報告されました。
  ※注2「プラセボ」:本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、
   にせものの薬[=偽薬(ぎやく)]。成分としては、少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のない
   ブドウ糖や乳糖が使われる事が多い。

 最終日にUpdate from EMPA-REG OUTCOME Trialと題してEMPA-REG OUTCOME試験からの腎アウトカムおよび心血管ベネフィットに対する媒介分析等が報告されました。エンパグリフロジン群はプラセボ群と比べて腎アウトカムである顕性アルブミン尿への進展、eGFR≤45mL/min/1.73m2を伴う血清クレアチニン倍化、腎代替療法の導入および腎死の腎複合イベントを39%有意に減少させたと報告されました。エンパグリフロジン投与によりeGFRは一旦速やかに低下しましたが、1年以降はプラセボと比べて保持されました。腎アウトカムを改善した機序について、糸球体内圧の減少による影響が推察されています。媒介分析では、心血管死に対してヘマトクリット値が強く影響していることから、循環血漿量減少が心血管ベネフィットの機序に関連していた可能性が考えられています。また、ケトン体へのエネルギー源の移行が有利に働く可能性も示唆されています。
 両試験の結果発表の瞬間、大会場から拍手が沸き起こり、インパクトの大きさを実感しました。

眼の合併症進展に関する研究 ACCORDION Eye Study

 ACCORD Eye Studyのフォローアップ研究であるACCORDION Eye Studyの発表もありました。ACCORD Eye Study 終了後4年間の平均HbA1cは強化療法群と標準治療群でほぼ同等となりましたが、4年後の糖尿病網膜症の進展率は強化療法群で5.8%、標準治療群で12.7%であり、強化療法群で約半分に抑制されました。これは2型糖尿病におけるレガシー(遺産)効果を網膜症で確認したものでした。この研究は私自身の研究結果を裏付けるものであり、非常に興味深いものでした。

 ニューオーリンズはミシシッピ川が流れる、ジャズと南北戦争時代の歴史を感じさせる町でした。学会場の一角からジャズバンドのトランペットの音が心地良く響いていました。

 
 

第21回アディポサイエンス・シンポジウム 学会報告

糖尿病内科 山崎 広貴

脂質と脂肪細胞

 2016年8月20日(土)に大阪府の千里ライフサイエンスセンターにて、第21回アディポサイエンス・シンポジウムが開催されました。これは脂肪にまつわることをテーマにした学会で、本年も、エネルギー代謝や臓器間ネットワーク、遺伝子発現制御など様々な観点から、多くの報告と活発な討議がなされました。

 皆様は「脂肪」と聞いて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか?気になる内臓脂肪のことを思い出す方もいらっしゃるかもしれません。脂肪は(もう少し広くいうと「脂質」という言葉で表されますが)、体を作るための原料となったり、エネルギーの源として使われたりと、多くの重要な役割を持っています。一方で、体にとって過剰な栄養が存在する状況では、体の中のどこかにそれをため込む必要がありますが、とくに「脂肪細胞」という細胞が脂肪分として蓄積することが重要です。脂肪細胞は、大きくなったり数を増やしたり、なんとかして過剰な栄養があふれないように努めます。しかし栄養分があまりに過剰になってくると、ふくれた脂肪細胞はダメージを受けはじめます。そして、脂肪細胞は免疫細胞と関わり合いながら「炎症」状態を形成します。このときの「炎症」は、ケガをしたときに傷口で起こるような痛みを伴う炎症とは違って、くすぶったような低いレベルの炎症が持続する状態であり、「慢性炎症」と呼ばれます。このような過剰な脂肪蓄積や慢性炎症が、メタボリックシンドローム(メタボ)や糖尿病の病態形成・増悪と関わる機序として注目されています。

脂肪を減らしやすくする体内物質がある?

 では、脂肪を減らしやすくしたり、慢性炎症を起こりにくくさせたりするには、どうすればよいでしょうか?基本は、過剰な栄養を取らない(食事療法)、そして栄養を適切に消費する(運動療法)ということになりますが、何か体の中にある物質でそれを助けてくれるものはないものでしょうか?
 実は我々は、現在着目している性ホルモン結合グロブリン(SHBG)という蛋白質に、そのような大変都合の良い作用があるのではないかということを見出しつつあり、今回の学会で報告しました。このSHBGという蛋白質は、以前から血液中で性ホルモンを運搬する役割が知られていましたが、脂肪量を減らしたり慢性炎症を抑制したり、そんな作用もあるのではないかと考えています。

 臨床的に、糖尿病やメタボの人はSHBGの血中濃度が低い傾向にあることがわかっています。SHBGは糖・脂質代謝にとって保護的な役割を果たしている可能性が十分想定されます。今のところ培養細胞やマウスを用いた実験の段階ですが、今後、機序の詳細を解明することで、肥満やメタボ、糖尿病の予防や治療に役立つような研究へ発展させていきたいと考えています。