糖尿病・高血圧症・高脂血症などの生活習慣病と消化器系疾患を中心とした診療を行っております。

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成人病News

超高齢化社会の到来と糖尿病対策

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

急速に進む超高齢化社会

 わが国の国勢調査の結果によれば、近年65歳以上の人口の割合は著しく伸び、日本は“超高齢化社会”の到来を迎えました。とくに日本は“超高齢化”のスピードが速く、65歳以上の人口が10%から20%となる超高齢化に要した年数が27年間と、他国に比べて著しく速かったのが特徴といえます。このまま推移すれば、2020年には総人口に対する65歳以上の人口の割合は29%を超えるものと予測されています(平成22年度版高齢社会白書)。  一方、認知症の最大の危険因子は加齢であり、わが国では高齢化の進行とともに認知症の高齢者が増加しており、65歳以上における認知症有病率は全国平均で15.8%に達しています(内科:109、2012)。  高齢者糖尿病患者の増加は、当然のことながら認知症を伴う糖尿病患者の増加をもたらすものであり、「糖尿病治療ガイド2016-2017」(日本糖尿病学会編・著)においても、糖尿病の合併症の項でとり上げられているばかりでなく、「ライフステージごとの糖尿病」の中でも高齢者の糖尿病として述べられています。

高齢者の糖尿病の管理目標が変わりました

 日本糖尿病学会と日本老年医学会とは、2015年4月に「高齢者糖尿病患者における血糖コントロールの目標」を設定するために合同委員会を設置し、2016年5月には「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を発表しました。表に示すように、患者の認知機能とADL(日常生活動作)の程度によってカテゴリーをT〜Vに分け、さらに重症低血糖が危惧される糖尿病治療薬の使用の有無別にHbA1cのコントロール目標値が示されています。この表で注目すべきことは、HbA1cの下限値の目標を示している点も新しい点といえます。


合同委員会における基本的な考え方のまとめ

 1) 血糖コントロール目標は、患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能(ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して、個別に設定します。  2) 重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行います。  3) 高齢者ではこれらの目標値や、目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としました。

 今回のNewsでは、高齢者糖尿病の血糖コントロールの管理目標値の変更を中心に述べました。ひとくちに高齢者糖尿病といっても、糖尿病の罹病期間の長短や、その間のコントロールの良否によって合併症の有無やその程度はさまざまであり、患者さんはご自身の治療方針については、まず主治医の先生方とよく相談されることをおすすめします。

 
 

超高齢化社会と消化器病

消化器内科部長 鈴木 伸三

 現在、日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。総人口に対する65歳以上の人が占める割合は、2015年の国勢調査では26.8%となり、21%以上を基準とする「超高齢社会」をすでに満たしています。消化器病の診療においても、いかに高齢者の方にあった医療を提供できるかというのが我々の課題です。

高齢者の癌こそ早期発見を

 胃癌、大腸癌などの癌をはじめ、潰瘍など多くの消化器病は高齢になるほどリスクが高くなります。一方、高齢者では体力の問題から、大きな手術を受けたり消耗の激しい化学療法を受けたりと体力負荷の大きな医療を受けることはだんだん難しくなります。そのため、いかに体力負荷の大きな医療を受けなくて済むようにすることが重要です。  現在、多くの胃癌、大腸癌は早期であれば、内視鏡治療によって完治させることが可能です。当然、開腹手術に比べて負荷は小さく高齢者に対する忍容性は高くなります。つまり、内視鏡治療が受けられるうちに見つけて治療してしまうということが重要です。内視鏡治療が受けられるような早期の胃癌、大腸癌では、腹痛などの症状はほとんどありません。健診や人間ドックを受けて無症状のうちに発見するということが、高齢者でこそ非常に重要です。  自治体のがん検診のみの内容ではなかなか早期発見が難しいのが現状です。定年後は会社からの受診勧奨等もなくなりがちです。定年後こそ、むしろご自分が癌の危険年齢に差し掛かっているということを認識され、積極的な健康診断や人間ドックの受診を心掛けてください。

ピロリ菌除菌は遅すぎるなんてことはない、でもお早めに

 ひとたび病気になってしまうと治療が難しい高齢者では、そもそも病気に罹らないようにする予防が重要です。日本の高齢者では、胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となるピロリ菌という菌の感染率が非常に高いことが知られています。おおよそ年齢引く10%が感染率だとされています。70歳であれば60%ということで、高齢者の2人に1人以上は感染者です。ピロリ菌は、幼少期に人の胃に感染する菌で高齢者の方にとっては、もう何十年もご自分の胃に感染していた菌ですが、近年では、1週間の内服治療で除菌が可能となっています。さらに、幼少期にしか感染しませんので一度除菌してしまえば、再感染するということは、まずありません。  また、ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因でもありますが、他の原因としては、抗血小板剤(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の治療薬)や痛み止めがあります。ピロリ菌の感染者で原因薬剤も飲んでいるという人が一番危ない人です。そしてそういう方は高齢者の方です。必要な薬を止めるというのは難しいですが、ピロリ菌の除菌は可能です。そして、除菌治療は高齢者といえども胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の予防になります。何十年も感染していたからといって遅すぎるなんてことはありません。しかし、若年者ほど予防効果は大きいと思われますので、早いに越したことはないのです。  何かご不明の点がありましたら、当院では人間ドックや、胃カメラ、大腸カメラも可能で、ピロリ菌外来(消化器内科での検査・除菌)も設けておりますので、是非とも、ご相談ください。

 
 

超高齢化社会と眼疾患

眼科 船津 英陽

加齢に伴う代表的な目の変化―老眼と白内障

 私たちにとって情報の80%は視覚、すなわち物を見ることによって得られると言われています。そのため、高齢になっても良好な視力を保つことが、快適な日常生活をおくるために重要です。
 多くの人に起こる加齢に伴う代表的な目の変化としては、老眼と白内障があげられます。老眼は「目のピントを合わせる力(調節力)」が低下して、近くや遠くが見えにくくなってくる状態です。老眼鏡により見え方を改善できますが、定期的に自分の目に合った眼鏡を作製し、装用することがポイントです。
 加齢に伴う白内障は、水晶体が混濁する状態で、原則として年余の単位で徐々に進行していきます。症状としては、霧や膜がかかったり、物がはっきり見えにくくなったり、明るいところでまぶしく感じたりします。白内障が進行して、生活に支障が出るようになってきた場合には、主治医と相談の上、白内障手術を受けることが推奨されます。

「突然見えにくくなる疾患」と「重症になるまで自覚症状が出にくい疾患」

 突然見えにくくなる疾患としては、網膜静脈閉塞症と加齢黄斑変性があげられます。網膜静脈閉塞症は高血圧、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病を有する人に多い疾患で、網膜の静脈が閉塞して見えにくくなります。静脈の閉塞部位や範囲により見え方に幅があり、目の局所の治療と生活習慣病に対する全身治療を並行して行うと効果的です。
 加齢黄斑変性は網膜の中心部(黄斑)に異常が起こり、物がゆがんで見えたり、中心がぼやけたりします。視力改善が難しいため、目の中心部が傷む前に早期発見、早期治療することが重要です。
 重症になるまで自覚症状が出にくい疾患としては、緑内障や糖尿病網膜症があげられます。緑内障は視神経が障害されて、視野が狭くなり、視力が低下する病気で、わが国の失明原因の第一位を占めています。障害を受けた視神経は再生しないので、失われた視野や視力は元に戻りません。検診などで視神経乳頭の陥凹拡大を指摘された場合には、緑内障の可能性があるため、眼科で眼底検査や視野検査を受けることが推奨されます。
 糖尿病網膜症は失明原因の第二位を占め、高血糖状態が長年継続することにより発症、進展します。緑内障と同様に重症になるまで自覚症状が現れにくいので、たとえ見え方に問題がなくても1年に1回以上の定期的眼科受診(眼底検査)が不可欠です。また、高血糖状態は身体に記憶されるため、現在血糖コントロールが良好でも、検査を受けることをお勧めします。

頻度の高い症状―「飛蚊症」

 頻度の高い症状として飛蚊症(ひぶんしょう)があげられます。飛蚊症は文字通り蚊のような虫が飛んでいるように見える症状です。眼球の中央にある硝子体(しょうしたい)というゼリー状の組織が加齢によりとろけて、目の中で自由に動いているのが見えてきます。飛蚊症の90%は生理的変化ですが、網膜裂孔や網膜剥離などの緊急を要する疾患においても同様の症状がみられるため、数が増えたり、大きな虫が飛んでいるように見える場合には、早めに近くの眼科で眼底検査を受けることをお勧めします。